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神戸地方裁判所 昭和51年(わ)926号 判決

主文

被告人を懲役三年に処する。

この裁判の確定した日から五年間右刑の執行を猶予する。

押収してある覚せい剤粉末一袋(昭和五一年押第三一八号の三)を没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、法定の除外事由がないのに、

第一、営利の目的をもつて、昭和五一年六月七日午後七時三〇分ころ、広島市新天地一の一三よもぎ寿司店前路上において、楠木元明からジアセチルモルヒネ塩酸塩を含有する麻薬二八・一七〇二グラム(小麦殿粉が混在する)を代金二五万円で譲り受け、

第二、営利の目的をもつて、前同日午後一〇時三〇分ころ、広島市堀川町一番三号宝塚地所ビル前路上を走行中のタクシー内において、宮本義廣に対し、ジアセチルモルヒネ塩酸塩を含有する前記麻薬二八・一七〇二グラム(小麦殿粉が混在する)を代金三五万円で譲り渡し、

第三、同年一二月三日午後二時三〇分ころ、神戸市生田区下山手通五丁目三八、兵庫県警察本部保安部生活課において、フエニルメチルアミノプロパン塩類を含有する覚せい剤粉末二・七〇一三グラム(昭和五一年押第三一八号の三はその鑑定残量)を所持し、

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示第一および第二の各所為はいずれも麻薬取締法六四条の二第二項、一項、一二条一項に該当(但し罰金刑はいずれも併科しない)し、判示第三の所為は覚せい剤取締法四一条の二第一項一号、一四条一項に該当(弁護人は、被告人の本件所持は警察に届けるためのものであり違法性がない旨主張するが、被告人が本件覚せい剤を所持するに至つた経緯、即ち、楠木元明から乗末峯雄への本件覚せい剤の譲渡に際して被告人があつせん行為をしていること、そしてその後右乗末より墓代金の一部相殺という形で被告人に本件覚せい剤が渡されていること、さらに被告人が右乗末から本件覚せい剤を受取つてから六日後になつてようやくこれを警察に届け出ていること、などの事情に照らせば、被告人の本件所持が直ちに違法性がなくなるものと言うことはできない。)するが、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により罪および犯情の最も重い判示第一の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役三年に処し、情状により、同法二五条一項を適用し、この裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予することとし、なお押収してある覚せい剤粉末一袋(昭和五一年押第三一八号の三)は判示第三の罪に係るもので被告人が所持するものであるから覚せい剤取締法四一条の六によりこれを没収することとする。

よつて主文のとおり判決する。

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